一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「それから、確実に君を攫えるように手はずを整えた」
ユリウスの告白に、メアリはエマと食事した夜のことを思い出した。
『そうか。では、彼女で間違いはないのか』
『はい。すぐに動きますか?』
『……いや、確実にいきたい。まずは仕込みを』
『御意』
薄暗い路地裏で密談していたユリウスを。
「もしかして、私を攫う為に軍まで動かしたの?」
「ご名答。おまけにフォンタナを手に入れられたら儲けものだろ?」
ユリウスは目を細めると冷たく微笑んだ。
「本当に、内通者なのね……」
次から次へと明かされる真実に、ユリウスが敵なのだとまざまざと思い知らされ、メアリの心が悲しく震えた。
ポタン、ポタンとどこからか滴が地面に落ちる音に、ユリウスの声が重なる。
「言っただろう? 見えるものだけを信用してはいけないと」
バカだなと言いたげな、けれどもどこか気遣うような柔らかさで告げたユリウスは、もう休むようにとメアリに伝えると自分用の革袋に口をつけて喉を潤した。