一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


見えるものだけを信用してはいけない。

それでも、ユリウスを裏切り者と非難できないのは、彼がメアリを案じてくれているのを知っているからだ。


『優しいメアリ。俺はいつかきっと君を傷つける。だから君は、この先何があっても俺を守ろうとはせず、自分が生き延びることだけを考えて。何があっても』


フォンタナへ出立する朝、真面目な表情でユリウスがせがんだ約束。

内通者である自分は守る価値もない。

だから、何かあればメアリはユリウスのことなど気にせずに生きろと言っていたのだ。

きっと、この言葉はユリウスの本心。

ならばそれだけでも信用に足る人物だと、メアリはユリウスの横顔をそっと盗み見た。


(あなたは十分すぎるくらい、守るべき価値のある人だわ)


胸の内で語りかけたメアリは、膝を抱えるとうずくまり瞼を閉じる。

脳裏にイアンやウィルたちが浮かび、ああ、心配をかけるだろうなと憂いたのもつかの間。

メアリは疲労による睡魔に急激に襲われて、あっという間に眠りの世界に落ちていった──。





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