一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
コリーナ村は小さいが、フォレスタットとアクアルーナを結ぶ街道にあり人の出入りも多い。
その為、村に三軒建つ宿屋は、夕刻になれば満室になってしまう事が常だと教えてくれたのは、三軒目の宿屋を経営する主人だ。
村の市場に近い一軒目と二軒目はすでに満室となっていて、村の外れに建つ三軒目を訪ねると、一室だけ空いていた。
「ベッドはひとつしかないけど、広めのベッドだから安心してくれ」
(何が安心なの!?)
心の中で思わず突っ込むメアリ。
ユリウスと同室というだけでも緊張するというのに、同じ寝台で寝るなど難易度が高過ぎる。
毛布に包まって床で寝ることにしようと考えていると、部屋の鍵を受け取ったユリウスがメアリに微笑みかけた。
「君がベッドから落ちないように、一晩中しっかり抱き締めててあげるよ」
「だっ、抱きっ!?」
「いやぁ、ラブラブですねぇ」
「違うんですっ、私たちは別に」
メアリは顔を真っ赤にし、主人に自分たちは恋人関係ではないのだと誤解を解こうとしたのだが。
「相変わらず照れ屋だ。さ、早く二人きりでゆっくりしよう」
ユリウスの手が色気を纏いながらメアリの腰に回され階段の方へとエスコートされる。