一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
そして、半刻後。
メアリはユリウスが露店で購入してきてくれたサンドイッチにかぶりつき、笑みを漏らす。
「これ、凄く美味しいです!」
お城のかしこまった料理とは違うカジュアルな食事を久しぶりに口にし喜ぶメアリを、ユリウスは微笑ましく見て自分のサンドイッチを齧った。
肉厚なチキンとフレッシュなレタスが、程よく焼けたパンに挟まれたこのサンドイッチは、ユリウスにとっては懐かしの味だ。
「俺も、ヴラフォスからアクアルーナに来る途中、この村でこのサンドイッチを食べて感動したな」
手の込んだ城の料理とは違う美味しさに、ついもうひとつ追加したのだとユリウスは話した。
「ユリウスはいくつの頃からアクアルーナにいたの?」
「十六歳の時に」
ユリウスの現在の年齢は二十四歳。
つまり、ユリウスがアクアルーナに潜入してから八年も経っているということに、メアリは驚愕する。
「八年の間、アクアルーナにいて情報を流していたのね」
「君のことがなければきっと、俺は今もまだ帰れなかっただろうな」
ユリウスの話し振りは、自らが望んでアクアルーナに潜入していたのではないことを滲ませている。
きっと、もっと早く帰りたかったのだろうと感じたメアリはサンドイッチを両手で持ったまま「良かったですね」と苦笑した。