一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


お礼をしたいと言い合い、微笑み合い、心根を褒めてくれたことも。

どこにも本来のユリウスはいなかったというのか。

メアリにはそうは見えなかったし、王女と知ってからもユリウスはメアリを守ろうとしていたのを覚えている。

いつかメアリを傷つけると語ったのも、考えてみれば、自分がヴラフォスの内通者であることを明かし、メアリを傷つけるとあの時すでに仄めかしていた。

ユリウスにも自覚があるのだろう。

少しの無言と、僅かに揺れた瞳。

でも、それはすぐに笑みによって隠された。


「メアリ。君がおとなしくヴラフォスの言いなりになってくれるなら、その問いに答えてもいいけど、どうする?」

「言いなりにはなりません」


アクアルーナの王女として、国の為にならないことには首を縦には振れない。

けれど、父と母が守ってくれた命を無駄にするようなこともする気はない。


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