一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
メアリは精一杯足掻くつもりで答えると、ふ、と息を吐いて笑む。
「きっぱり言ったな。まあ、だから、かな……」
尻すぼみゆく声に、メアリが何がと訊ねるように首をひねるけれど、ユリウスはもう話すつもりはないとばかりに緩く頭を振った。
「明日も一日移動になる。しっかり食べておいて」
食べかけのサンドイッチを紙に包み直して立ち上がるユリウスは、扉に手をかける。
「どこに行くの?」
「アクアルーナの動きを探りに。戻りは遅くなるから君は寝ていていいよ」
疲れているはずだが、忙しなく出て行くユリウスをメアリは引き止めることはしなかった。
これ以上会話をしない為にも出ていくのだろうと感じたからだ。
「気をつけて、ください」
敵だと、騎士ではないというユリウスにそんか見送りの言葉はおかしいはずだ。
けれど、ユリウスはクスリと肩をすくめると「ありがとう」と告げ、扉を閉めた。
メアリは小さな口で、サンドイッチを喰む。
さっきは美味しいと思ったはずのサンドイッチの味が、不思議とそっけなく感じられた。