一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
──ザリ、と薄い土の上をゆっくりと歩くユリウスは夜空を見上げる。
ひとつ、星が流れて、吐き出す白い息が夜空に舞い上がり消えた。
八年前、ユリウスはこの村で確かにサンドイッチを食べている。
ボリュームとジューシーな味に感動し、追加で購入したのもしっかり覚えいるが、実際ポジティブな思い出はそれのみだ。
あとは、体良く自分をヴラフォスから追い出したモデストへの苛立ちと、上手く立ち回れるのかという不安で、あまり眠れなかった印象が強い。
何より、活気溢れる村の雰囲気の中、自分だけが妙に浮いている気がしてならなかったユリウスは、朝早くに村を出て洞窟を目指した。
(そういえば、あの頃は洞窟の魔物に手こずったな……)
幸いにもオーガに出くわすことはなかったが、もしも十六歳の自分が対峙することになれば、まともに相手をせずに逃げていただろう。
幼い頃から剣術の稽古をしてきているとはいえ、魔物と戦うことは多くなかった。
そう思うと、アクアルーナに入ってから傭兵となり少しずつ力をつけ、騎士への道を開き、仲間たちと切磋琢磨しながら自分が強くなったことをユリウスは改めて自覚する。