一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
(仲間……そう呼べる資格は、ないか)
人間関係についてはあまり踏み込むべきではないと思っていた。
けれど、疑われないようにする為には信頼を得られる程度の交流は必要であり、信頼を得る為には踏み込まないわけにはいかず。
ましてや、ひとつの場所長く留まれば、友と呼べるべき者、信を置けるべき者が増えて行くの当然だった。
オースティンは上司としては気さくで頼もしく、ルーカスは女性関係がやや派手ではあるが飄々としながらも意外と冷静な部分も持ち合わせており、人との距離感も心得ているので付き合いやすいタイプだ。
そして、ルーカスが可愛がるウィルも愛想が無いが照れ屋でついかまいたくなる性格をしている。
また、部下であるセオは落ち着きなく危なかっかしいところはあるが、その明るさと人懐こさはユリウスを和ませてくれていた。
騎士としての日々は、ヴラフォスの皇子であるユリウスを忘れることがあったほどに、充実していたのは確かで、それ故に良心が痛み苦しむことも多かった。
彼らは、自分が裏切ったと知ったら軽蔑するだろうかとユリウスが煌めく星々から視線を外した時だ。
「ユリウス様」
林の暗がりからそっと声がかかり、ユリウスは足を止める。
そして、辺りに見ている者がいないか確かめると草を踏み林の中へと踏み入った。
すると、木の陰からヴラフォスの密偵が現れ頭を下げる。