一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
騎士が捜索にあたっているならば馬で出ているはず。
街中を探すとしても、一日もあればデセルトを出るかもしれない。
その時、こちらに来るか、一度フォンタナに戻るか。
「馬を使いますか?」
「そうだな。念のため早めにティンバーに着くようにしたい」
「承知致しました。明日の朝には宿の厩に用意しておきます」
「頼む」
「御意」
ヨハンは長い前髪から覗く左目を伏せ一礼すると、林の暗闇へと姿を消した。
ユリウスは短く息を吐き出すと、表通りへと踵を返す。
ティンバーに早く到着すれば、モデストの思惑にメアリが思い悩むことになるのも早まってしまう。
それでも、自分はそうしなければならない。
モデストの私利私欲が絡んでいたとしても、父の命であり、兄を救えるのだから。
これ以上メアリに踏み込んではならない。
(俺はもう、アクアルーナの騎士じゃない)
メアリを守る資格も持ち合わせてない、メアリを傷つけるだけの者。
彼女に期待を持たせてない為にも、突き放すべきだとユリウスは心に決め、唇を引き結んだ。