一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


人々が足取りも軽く行きかう街の市場。

建ち並ぶ活気ある店と、木々に飾られた色とりどりのランタンやガーランド。

屋根付きの小さな舞台では楽団が心踊る演奏を披露している。

賑やかな雰囲気の中、すれ違った女性たちから「彼はお祭りに来ないの?」「ランタンを放つ時間にはって言ってたけど、多分間に合わないわ」という会話が聞こえて、今夜はお祭りが催され、その最中ランタンを使うのだと理解した。

一体どんなお祭りなのだろうかとメアリが目を輝かせる。

そんなメアリの様子をユリウスは馬の手綱を引きながら見つめ、気づけばやはり頰を緩めてしまっていた。


「見て回りたい?」

「えっ」


道中、必要のない会話はずっとしなかったユリウスに問われ、メアリは目を見張る。


「お祭り、気になるんだろう?」

「え、あの、ちょっとだけ。でもほら、そんなことできる状況じゃないのはわかってるから大丈夫! それよりお祭りがあるなら宿屋も空きがあるか心配だし、急ぎましょうか!」


笑顔を貼り付け、先程まで眺めていた市場から視線を剥がすメアリに、ユリウスは苦笑し溜め息を吐いた。


「君はバカだな」


結局突き放し切れない自分も、とユリウスは心の中で続ける。


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