一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


ティンバーでは、年に二回祭りが開催される。

暑さを感じる頃には収穫に感謝し次の豊作を祈る祭りが。

吐き出す息が白くなる今頃には無病息災を祈る祭りが開かれている。

市場を華やかに飾るランタンは、祭りのフィナーレで願いを乗せ夜空へと放たれるのだと、宿屋から市場へと向かう途中、メアリはユリウスから聞いた。

ワンピースの裾を軽やかに揺らして市場を歩くメアリの隣で、ユリウスは辺りの様子を伺っている。

その瞳は密かに鋭く、アクアルーナの追っ手を警戒しているのだとわかった。

メアリからはアクアルーナの騎士らしき者は見えない。

怪しい動きもなく、どちらかといえば笑みも浮かべず辺りを見回す今の自分たちの方が浮いて見えるだろう。

メアリはせっかく貰えた時間を無駄にしまいと、楽団が奏でる軽快な音色をバックミュージックに路上に並ぶ品物に目を向けた。

祭りの日の市場は普段とは違い、店舗を持たない者もスペースを得て商品を販売することができる。

行商人もいれば、家のコレクションを引っ張り出してきている者もいて、値段も交渉可能。


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