一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
メアリはアクアルーナでは見たこともない物に興味津々で、あれこれと楽しそうに手にとっては店主と会話して店を巡る。
やがて、湯気の立ち上る店の前に差し掛かった時、メアリは「そこのお嬢さん!」と声をかけられ足を止めた。
「うちの自慢の肉饅頭、買ってかないかい?」
人の良さそうな笑みを浮かべた膨よかな女性が勧めるのは、甘い小麦の香り漂う肉饅頭。
寒いこの時期、フォレスタットでは人気の料理だが、アクアルーナではあまり見かけないもので、メアリは小さく鳴ったお腹を押さえ隣に立つユリウスを見上げた。
まだ夕食を済ませていない為、ユリウスは特に反対することもなく頷く。
「では店主、そちらを二つお願いします」
甘く爽やかな笑顔で注文するユリウスに、店主の女性はふっくらとした頬を赤く染めた。
「あら、素敵な笑顔。お嬢さん、いい男つかまえたわねぇ」
フフフと笑って、ユリウスからお金を受け取ると「サービスしちゃう」とひとつ追加で肉饅頭を紙袋に詰める。