一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


メアリはアクアルーナでは見たこともない物に興味津々で、あれこれと楽しそうに手にとっては店主と会話して店を巡る。

やがて、湯気の立ち上る店の前に差し掛かった時、メアリは「そこのお嬢さん!」と声をかけられ足を止めた。


「うちの自慢の肉饅頭、買ってかないかい?」


人の良さそうな笑みを浮かべた膨よかな女性が勧めるのは、甘い小麦の香り漂う肉饅頭。

寒いこの時期、フォレスタットでは人気の料理だが、アクアルーナではあまり見かけないもので、メアリは小さく鳴ったお腹を押さえ隣に立つユリウスを見上げた。

まだ夕食を済ませていない為、ユリウスは特に反対することもなく頷く。


「では店主、そちらを二つお願いします」


甘く爽やかな笑顔で注文するユリウスに、店主の女性はふっくらとした頬を赤く染めた。


「あら、素敵な笑顔。お嬢さん、いい男つかまえたわねぇ」


フフフと笑って、ユリウスからお金を受け取ると「サービスしちゃう」とひとつ追加で肉饅頭を紙袋に詰める。


< 215 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop