一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
どうやら店主はメアリとユリウスが恋人か夫婦だと勘違いしているようだ。
一瞬「違います」と否定しそうになり、けれどすぐ、夫婦として振る舞うようにユリウスから言われているのを思い出す。
それでも肯定するには照れが邪魔をし、結局メアリは愛想笑いを浮かべるのみだった。
「ありがとうね! またお腹空いたら寄ってね」
店主に見送られ、お幸せにとランタンまでサービスで貰った二人は、小さく頭を下げてから再び市場を見て歩く。
「無病息災を願いながら飛ばすんでしたよね?」
紙で作られた黄色いランタンを持ち上げて訊ねるメアリに、ユリウスは「基本は」と答えた。
「昔はそうだと聞いたけど、今は自分の好きな願いをこめて飛ばすのが主流らしいな」
「そうなんですね」
温かく優しい味わいの肉饅頭でお腹を満たした二人は、せっかくランタンを貰ったのだからとフィナーレとなるイベントに参加する為にティンバーに流れる川辺へと移動する。
メアリたちが到着する頃にはすでに川に沿ってランタンを手にした人々が集まっていた。