一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
流れの穏やかな川の側に立つと冷んやりとした空気で寒さが増す。
メアリは白息を吐くとユリウスにランタンを差し出した。
「どうぞ、ユリウスが願って」
貰ったランタンはひとつのみ。
それならばと何度も命を救ってくれたユリウスにと渡そうとしたのだが、メアリの手からランタンが離れることはなかった。
「俺の願いよりも、君の願いを」
受け取らずにユリウスはそれだけ言うとあちこちから夜空へと放たれてゆくランタンに視線を移す。
興味がないのか、遠慮をしているのか。
メアリは鼻筋の通ったユリウスの横顔を見つめて悩む。
メアリの願いは、父が守ってきたアクアルーナを守ることだ。
けれど、それは常に願っていることであり、自分が努力しなければならないことだと思っている。
では他に何かあるかと考えてはみても、例えばアクアルーナに帰れますようにだとすれば、ユリウスが困ってしまうのではと思うと願い辛い。
どうしたものかと眉を寄せたメアリはふと思いついた。
(ユリウスの願いが、叶いますように)