一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
第四章

1.はじめましてとハプニング



祭りを楽しんだ翌日、雲が流れる青空の下で、メアリは再び馬に乗っていた。

しかし、その顔は緊張で強張り瞳は不安げに揺れている。

ティンバーを出発してから数刻。

ついに国境を越え、ヴラフォス帝国領に入ったからだ。

広がる大地の地平線にぼんやりと街が見えてきて、メアリの唇が引き結ばれる。

ヴラフォスのイスベル。

高く堅固な塁壁に囲まれたヴラフォスの国境要塞都市だ。

ユリウスは馬の腹を蹴りスピードを速める。

馬はやや駆け足でイスベルを目指した。

洞窟を出た際、ユリウスがヴラフォスの帝都へ向かうと口にしていたのを思い出す。

帝都はイスベルより更に北へ行くのだが、途中に村や街はなかったとメアリは記憶している。

まだ太陽は真上にあるが、今日はここで休んで、また明日の朝に帝都を目指すのだろうかと考えていたら、背後のユリウスがタイミングよく口を開いた。


「イスベルには兄の住む宮殿がある。今日はそこに世話になる」


ユリウスの兄、ルシアン・イルハザード。

病弱な為にあまり表に出てこない第一皇子は、てっきり帝都にいるのかと思っていた為、メアリは目を丸くした。


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