一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
2.優しき国王と見送りの日
ぼんやりと、瞼の奥の熱を遠くに感じながら顔を上げる。
跨る白馬のさらりとしたたてがみを撫で、腰から下がる剣の柄頭に触れた。
ゆっくりと前進していく馬上から、ふと右側に視線をやれば、騎士の甲冑を纏ったウィルとルーカスがおり、左側には同じく凛々しい騎士姿のユリウスと、弓を背負ったセオが馬に跨っている。
前方を行く隊の旗は風を受けて揺れ、背後を振り返ればよく王と共にいるアクアルーナの重鎮、イアン・ロッド侯爵も馬の背で揺られているのが確認できた。
では、王はどこか。
見回してみるが王の姿はどこにも見あたらず、不思議に感じた直後、遠くにあった瞳の熱が急速に冷めていくのを感じ取り、ああ、自分はメアリであり”いつか”を”視ている”のだと悟った。
直後、辺りの色は失われ、人も景色も形を成していたものが夜霧のように闇に溶けて見えなくなる。
やがてゆっくりと夢から意識が浮上し、窓から差し込む朝陽にメアリは瞼を震わせた。