一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
脇に立つ兵士がメアリたちに歩み寄る。
「通行証を」
門を通るための物を示せと言われ、ユリウスは懐から指輪を取り出した。
銀色のそれには剣とワシがモチーフの紋章がデザインされて、兵士たちの顔つきが驚きに満ちた時、背後から馬がもう一頭駆けつけて止まる。
「ユリウス様」
馬に跨っているのはヨハンだ。
皇帝の血筋であることを明かす指輪。
それを手にしている者がユリウス皇子であると知った兵士たちは急いで頭を下げた。
ユリウスはその様子を確認し、開いた門を潜りながらヨハンに訊ねる。
「どうした?」
いきなり現れた人物にメアリが瞬きを繰り返す中、ヨハンは「陛下がこちらに向かわれているそうです」と明かした。
その途端、メアリだけでなくユリウスの顔も身体も強張る。
「なぜ。メアリか?」
「そのようです」
「では、モデストもいるな……」
「はい。到着は三日後になるかと」
メアリの後ろで手綱を握るユリウスは、小さく溜め息を吐いて苦笑した。
「よほどメアリに会いたいらしい」
「わ、私に? ユリウスに会いに来るのでしょう?」
「俺に? なぜそう思うんだ?」
「親子だもの」