一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
(……今のは、なに?)
指先でそっと瞼に触れる。
予知による熱はなりを潜め、瞳の色も戻っているだろうとメアリは目を開いた。
見慣れた天井をぼんやりと眺め、なぜ、自分が騎士団の者たちと共に馬に跨っていたのかとメアリはまだ覚醒しきっていない頭で考える。
皆でどこかに向かって移動しているようだった。
もしかしたら今後、何らかの理由で看護が必要になり付き添いでどこかへ行くのだろうか。
けれど、近くにジョシュアの姿はなかったなどと思考を巡らせていると部屋にノックの音が響いた。
「メアリ、起きてるかい?」
「ジョシュア先生?」
木製の扉の向こうからくぐもって聞こえるジョシュアの声に、メアリは体を起こすと肩にショールを羽織りベッドから降りた。
扉を開けると申し訳なさそうな顔でジョシュアが立っていて、良く見るといつも医務室で纏う白いコートを腕に掛けている。
「おはようメアリ」
「おはようございます、先生」
「起こしてゴメン。急患が出たから行ってくるよ」
「それなら私も」
一緒に行きますと続けるつもりだったメアリの言葉は、ジョシュアの「大丈夫」という声に遮られた。
「メアリは王に届ける薬の調合を頼むよ。夕方までに持っていかないと、明日の出立に間に合わないだろう」
「そ、そうでした」
昨日の野盗騒ぎに続き、予知夢を視たせいか、メアリは頭から大事な薬のことが頭から抜け落ちていたことに気付く。