一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「まあ、ちょうどいい。実は、兄上が君と少し話がしたいと言ってるんだ」

「わ、私とですか?」

「ああ。それで迎えにきたら、まさか迷子になっていたとは。今回は野盗に絡まれていなくて何より」

「もう本当に何度もごめんなさい」


居た堪れない気持ちでいっぱいになりながらも、迷子になったというアクシデントのおかげで顔を合わせづらいと思っていたユリウスと普段のペースで話せていることに胸を撫で下ろした。

また、ユリウスがいつも通りの態度であることもありがたく思っていると、ルシアンの部屋に案内すると告げられ、ユリウスは左肩にかけた真紅のマントを翻して絨毯を踏みしめる。

合わせてメアリも歩き出すと、エントランスホールから二階に上がり、ルシアンの部屋があるという西の塔へ向かった。


「兄上、メアリを連れてきました」


ユリウスが訊ねると「どうぞ」と憂いを帯びたような優しい声が返ってくる。


「失礼します……」


ユリウスに続いて入室したメアリは、大きなベッドに腰掛けるルシアンを見つけ頭を下げた。

緊張したメアリの姿に、ルシアンはゆっくりと立ち上がり目を細める。


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