一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「こんばんは、僕の弟、ユリウスの婚約者さん」
「えっ!?」
「兄上」
「おや? クレイグが騒いでいたけど違ったかい?」
「彼女が誰であるか説明したはずです」
ユリウスが呆れてたしなめると、ルシアンは「フフ、ごめん」と笑った。
「アクアルーナのメアリ王女様、大浴場ではバタついてろくに挨拶もできず、失礼しました」
「い、いえ。こちらこそ、入る前にしっかり確認もせず申し訳ありませんでした」
思い出して顔を赤くしたメアリは、頬の赤みを隠すように頭を下げる。
そうしてまだ熱を感じる中顔を上げると、ルシアンが優雅にお辞儀した。
「僕はルシアン。一応、ヴラフォス帝国皇帝の第一皇子です」
そっと挟み込まれた皮肉にメアリはあえて触れず、アシンメトリーのスカートを摘んで一礼する。
「改めまして、メアリ・ローゼンライト・アクアルーナと申します」
イアンとのレッスンの甲斐もあり、ルシアンに劣らない上品な挨拶をしたメアリを後ろから見ていたユリウスは、僅かに目尻を下げた。
「それで、お話があるとお聞きしました」
「うん。メアリ王女、僕は先ほどの責任をとろうと思うんだ」
「責任、ですか?」