一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
先ほどというのは、大浴場での事件を指しているのだろう。
だがあれは事故だ。
そして気づかなかった自分にも非があるのだから責任など感じずとも、と伝えたくて口を開いたのだが、一呼吸分、ルシアンが先に唇を動かす。
「そう。僕のお嫁さんになってもらおうかなって」
「えええっ!?」
「兄上!」
驚くふたりを楽しそうに笑ったルシアンは、メアリとユリウスに椅子にかけるように手で促した。
ルシアンが先に腰掛けると、メアリはおずおずと戸惑いつつ椅子に腰を下ろす。
ユリウスも続いて座り「ふざけないでください」と眉をひそめた。
「ふざけてはいないさ。メアリ王女が僕のお嫁さんになれば、陛下もモデストも下手なことはしないだろう?」
ルシアンは、メアリがなぜユリウスと共にヴラフォスにやってきたのかを知っている。
自分が密かに放っている密偵からしっかり報告を受けているからだ。
もちろん、体調が回復してきた時にユリウスからもどのような経緯で戻ったのかをおおまかに聞いていたのもあった。
「しかし、急すぎでは……」