一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
さすがのユリウスも結婚という展開に冷静さを保てず、兄の提案に渋りを見せる。
けれど、ルシアンは折れない。
「一目惚れにすればいい。何より命を救われた。恩を感じ、彼女こそが運命の人だと思ったと。いや、実際に恩は感じているんだよ。医師が来るまで倒れた僕を診ていてくれたんだ。本当にありがとう、メアリ王女」
身を乗り出すようにし、メアリの手を取ると細く長い指で優しくて包んだルシアン。
メアリはジョシュアの患者にするのと同じような感覚でルシアンに微笑みかける。
「いえ、当然のことをしただけです」
見つめ合う二人を見ていたユリウスは、眉間のシワを深めた。
そのことに目敏く気付いたルシアンが「不服かい?」と訊ねる。
ルシアンが言うのはメアリを娶る事か。
それとも今の二人の状態か。
どちらにせよ、ユリウスには首を縦に振ることは憚られ、視線を二人から外した。
すると、ルシアンはメアリの手を優しく離し、どことなくわざとらしい声で言う。
「ああ、そうだ! メアリ王女が僕のお嫁さんになるのが嫌なら、ユリウスのお嫁さんではどうかな」
名案だとばかりに人差し指を立てるルシアンだが、メアリもユリウスも激しく動揺を見せた。