一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない

2.木登り猫と落下するサル


翌朝、部屋に運ばれた朝食を食べ終えたメアリは、双子窓の外に広がる庭園を眺めていた。

白い花びらが眩しいノースポールが太陽の陽を受けて、嬉しそうに風に揺れている。

しかし、それを見て楽しむ余裕は今のメアリにはなかった。

昨夜、ルシアンから別れ際に告げられた言葉が頭の中で繰り返されているからだ。


『皇帝がここに来る前にどうしたいか答えを聞かせて』


メアリは自分がどうしたいのか、どうするべきかを昨夜からずっと考えていた。

ただの町娘であった頃ならいざ知らず、一国の王女が婚姻するとなれば、自分勝手に決められるものではない。

まして相手はヴラフォス帝国の皇子。

本来ならイアンをはじめとする重鎮たちに相談し、慎重に判断すべきもの。

けれど、ここにアクアルーナの者はいない。

自分で判断しなければならないのだ。

一国を担う者としての正しく導く責任がメアリに容赦なく圧し掛かる。

思わず息を吐いた時、以前、各国の名家や系譜、国交について学んでいる中でイアンに言われたことを思い出した。


『重要なのは、過去にどのような出来事があったかを学び、未来を見通す力をつけることです』


< 241 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop