一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
昨夜、ルシアンが声に出した嫌悪の言葉を思い出してみると、警戒するべきはヴラフォスの地やそこで生きる者ではなく、皇帝やモデストら政治に関わる者たちなのだと考えさせられていた時だ。
遠くない場所からか細い鳴き声が聞こえて、メアリは太陽の光を受け煌めく水面から視線をあげた。
すると、ガゼボ脇に生える背の高い樹木。
その枝に登って降りれなくなっている子猫を見つけた。
子猫のいる枝の下はちょうど池がある。
実はメアリは泳ぎが得意ではない。
なので、万が一子猫が池に落ちた場合、メアリはうまく助けられないのだ。
(よし、先手必勝!)
今のうちに子猫を助けようと、メアリは木の枝をうまく使って太い幹に足をかけ登っていく。
長いスカートのせいで動きにくさを感じながらも、どうにか子猫のところまで登り切ったメアリはそっと手を伸ばした。
「おいで。危ないから暴れてはダメよ」
子猫はかすかに震えているが、抵抗もせずにメアリの手に従う。
「いいこね」
微笑んで抱き締めると、ミャアと小さくないた子猫。
さて、次はここから降りるわけだが、子猫を手に抱きながらとなる。
しかも見下ろしてみれば予想外の高さ。
子猫の気持ちも理解でき、それはさておきどうしたものかと風で葉が擦れる音を聞きながらメアリは唸った。