一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ちょうどその頃、自室のバルコニーで報告書に目を通していたルシアンは、木の上で思案中のメアリを見つけ双眸を見張る。
「おや、可愛いおサルさんがいる」
あんな場所で何をしているのかと首を傾げると、部屋の扉をノックしてユリウスが姿を見せた。
「失礼します、兄上。昨夜のメアリ王女の件で話があります」
「ちょうどいいところに。そのメアリ王女がおサルさんになってるよ」
ユリウスを振り返ったルシアンがにっこりと笑う。
「は? サル?」
「ほら、あそこ」
ルシアンが指差す方向にいるメアリを見て、ユリウスはぎょっとしてから溜め息を吐いた。
「まったく……何をしてるんだ……」
「あの木、少し前の嵐で弱ってるから危ないかもしれないなぁ」
この時期の池は冷たいしと続けるルシアンの声に、ユリウスはさっと踵を返し廊下へと飛び出す。
途中、すれ違ったクレイグから「腹痛でしたらお薬をお持ちいたしますよ!」と見当違いな心配をされたが、かまわずにメアリの元へと駆けつけた。