一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「メアリ!」

「ユリウス、グッドタイミング! この子を受け取ってください。抱っこしながらだと降りれなくて」


メアリの腕に抱かれた子猫を見て、ユリウスは状況を理解する。


「わかった。こっちへ」


ユリウスが両手を伸ばすと、メアリは太めの枝の上から子猫の首根っこを掴んでユリウスへと腕を下ろした。

そして、無事に子猫がユリウスの手に収まったのと同時、メキ、と音が聞こえ、嫌な予感にメアリの身体が強張る。


(気のせい?)


むしろそうであってくれと願い足元を確かめようとした刹那、枝の根元にバキバキと亀裂が走りメアリの視界が一気に傾いた。

瞬時にどこかに飛び移れないかと態勢を整えようとしたのだが、無理な動きをしたせいで足首に痛みが走る。

その直後、枝は完全に幹から離れ、メアリはすぐ真下にある池に水飛沫をあげて落ちた。

コポリコポリと低い音が聞こえ、目を開くと細かな気泡が空を映す水面を目指して浮上する。
自分もあの場所へ行かなかればと両手で必死にもがくも、力が入りすぎてなかなかあがっていかず、メアリはパニックに陥った。


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