一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
もうこれ以上は息も続かないと、それでももう一度と手を上へ伸ばした時、水面が勢いよく割れる。
ユリウスが助けに飛び込んだのだ。
(ああ、ユリウスだ……)
ぼんやりしかけたメアリの瞳を見て、ユリウスは力なく伸ばされている手を掴んで引き寄せる。
そして、深く唇を重ねると酸素を口移した。
微量ではあったものの、メアリの命を繋ぐには十分足り、ユリウスはすぐさまメアリを抱えて水面へと上昇する。
「ぷはっ!! ぜぇ…… はぁっ……」
ようやく思う存分息を吸えたメアリは、呼吸を乱しながらも助かったことに安堵した。
ユリウスと共に池から上がると、子猫が丸く愛らしい瞳でメアリの様子を伺っている。
「よ、かった。あなたは、無事ね」
子猫に微笑みかけるメアリの横で、ずぶ濡れになったユリウスが呆れた眼差しで見た。
気づいたメアリは思わず正座をする。
「す、すみません、お手数おかけしまして……」
ここに来てから水に運がない。
水の都アクアルーナの王女なのにと内心で自虐していると、ユリウスの溜め息が聞こえる。
「君は……王女なんだろう。何よりも自分を優先するべきだ」
「でも、私は」
「わかってるよ。君は困っている者や弱っている者を見捨てることができない。本当に真っ直ぐで、優しくて、たけど危なっかしくて……目が離せない」
ユリウスの目がメアリを真っ直ぐに見つめ、力なく微笑んだ。