一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「なぜ、君が予知の力を持つアクアルーナの王女で、なぜ、俺は君を傷つけるヴラフォスの皇子なんだろう」
互いの立場を口にしたユリウスの濡れた髪から雫が頬を伝って落ちる。
「ユリウス……」
メアリが心配そうな声で呼ぶと、ユリウスはつい零してしまった言葉に我に返りばつが悪そうな表情を浮かべた。
「本当に、君といると調子が狂うな」
ふい、とユリウスが顔を背けた時、紅茶を持ってきたロッテがずぶ濡れの二人を見て慌てふためく。
「すっ、すぐにタオルを!」
「いや、待つよりも戻った方が早い。メアリ、風邪を引く前に中へ戻ろう」
「は、はい」
ユリウスに続いて立ち上がろうとしたメアリだったが、足首に痛みを感じよろけてしまった。
そういえばと、木の上で痛めてしまったのを思い出す。
「捻ったのか」
「多分……」
しかし、庇いながらなら歩けるかもと確かめようとした時、ユリウスがメアリを横にして抱き上げた。
その途端、水中でのことを思い出す。
意識がぼんやりとしていたので記憶が朧げだったのだが、息が持つようになった時、唇に柔らかな感触があったのを。
さきほどまではとにかく必死だったのと助けてもらえたという安堵で飛んでいたが、あれはもしかしてユリウスの……と、考えたが最後。
メアリの顔はあっという間に赤く染まった。