一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


当然ながら、内容はメアリの解放を要求するもので、その話し合いをしたいとのことらしい。


「でも、イアン様はなぜ私がヴラフォスにいるとわかったの?」

「さあ……? モデストの思惑に気づいたのか、もしくは、連れ去ったのが俺であり、正体を知ったのか」


ユリウスは考えつつ、テーブルを支えに頬杖をついた。


「軍に戻らなかった時点で疑っていたのかもしれない。それとも、もっと前から俺が内通者であることを疑っていたか……」


零した声に、メアリはイアンが騎士隊長の中に内通者がいる可能性が高いことを口にしていたのを思い出す。

あの時すでにユリウスを疑っていたのだろうか。


「とりあえず、手紙は兄上の元で止めてる。父上やモデストに知られれば、君を人質にして酷いことをするかもしれないと、兄上が心配していた」

「ルシアン皇子は、皇帝陛下と宰相のモデスト・テスタのやり方に反対なのね」


そして、理由のひとつが二人を嫌いだから、なのだ。


「ユリウスも、モデスト宰相が好きではない?」

「この前のやり取りを見て好きなように見えたなら、君の目を疑うな」


宰相のことを思い出すだけでげんなりしたのか、ユリウスは少し機嫌悪そうにすると、ワインに浮かぶフルーツのかけらを混ぜるようにグラスをゆっくりと揺らす。


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