一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「父上は、モデストが来てから変わられた。いや……変えられた」
「何が……あったのか、聞いても平気?」
「そう、だな。君は、モデストの悪意と父上の弱さに巻き込まれた。聞く権利はある」
息を吐いて、視線はワイングラスに落としたままにユリウスは打ち明けた。
「……父上は病んでいる」と。
「ご病気なの?」
「心の病だ。きっかけは、何年も前に、母上が父上の命を狙ったことだった」
毒殺を企んで、けれど失敗に終わったと明かすユリウスの瞳が暗く翳る。
その事件は、皇帝の心だけでなく、息子であるユリウスの心も傷つけたのだろう。
きっと、ルシアンの心も。
自身に置き換えて想像し、メアリの胸が苦しくなる。
「それだけでも父上は参っていただろうに、今度は信頼していた家臣にも裏切られた」
しかも、その家臣は王妃とただならぬ関係だったようで、怒り狂った皇帝は二人を切った。
しかしそれだけでは終わらず、暫くするとルシアン皇子が侍女に毒を盛られる事件が起きる。
一命はとりとめたものの、暫くはトラウマで何も口にできなくなり、部屋にこもりがちになった。