一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
メアリは大きな瞳を優しく細める。
「だって、ユリウスには父の命を奪うつもりはなく、守り、逃し、騎士団長と共にしんがりを務め戦ってくれた。それが偽りでなかったとわかったから」
だから良かったですと微笑んだメアリに、ユリウスは眉を下げて俯いた。
「本当にバカだなぁ……君は。それに、ズルい」
責めるどころか、まるで許すような笑みを向けられたら、全てを捨てても守ってやりたいと思えるくらいに卑怯だと、ユリウスは苦笑する。
「安心したら、眠くなってきたかも」
ゆっくりと瞬きをし、テーブルに体を預けたメアリは目を閉じた。
「寝るなら寝台へ。俺ももう部屋に戻るよ」
告げながら立ち上がったユリウスの袖を掴むメアリ。
「まだ、行かないで」
「……いや、でも」
「ユリウスの声……好きなの。聞いてると落ち着く」
酔いが回っているのか、蕩けた口調で甘えられて、ユリウスは戸惑ってしまう。
初めて見るメアリの姿に、ユリウスの心臓は甘さを纏って暴れ始めた。
「一緒にいると、ドキドキしたりフワフワしたりもするけど、でも、不思議と落ち着く」
どこか夢見心地といった様子で囁かれた言葉は、芽生えた恋心を自覚せずに音にした幼子の告白のようで。
ユリウスは、どう答えるべきか迷い、瞳を揺らす。