一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「なんでしょう……」
「満月の夜にしか未来を拾えないというのは真でしょうか」
「はい」
頷くと、モデストはどことなく高揚するように目を見開く。
「それは天候に関係なく?」
「雲に隠れている場合は、夢で視ることが多いです」
「隠れていない場合は」
「その時は突然脳裏に浮かぶことがあります」
メアリは自分が経験してきたままに答えると、「ふむ」とモデストの瞳が嬉しそうに細まった。
「なるほど興味深い。満月の夜が、今から待ち遠しいですな。メアリ王女はどのような未来を視るのか。それがヴラフォスに関わるものであるといいのですが」
期待を寄せるモデストに、メアリは当惑の眉をひそめる。
「私の力をあてにせず、国民や支えてくれる者たちの声に耳を傾け、良いと思う道を選ぶのが一番だと思います」
「国民ですか。アクアルーナではどうか知りませんが、ヴラフォスに住まう彼らは文句ばかりが得意でね。重鎮の多くも睨み合いがお好きな方ばかりです。自分の意にそぐわないからと言い争いばかりで困ります。相手をしていたら埒があかない。ならば真面目に聞いても仕方ないのですよ」
だから適当にあしらい、あとは陛下の思うままに。
しかし、それでは反感を買い、ヴラフォスの名を貶めるだけではとメアリは考えた。