一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
覚悟を持った強い瞳で見つめられたモデストは、眉を上げて息を吐く。
「なんともまぁ、よく似ておりますな……」
「父にですか?」
父とは面識があったはずだと思い訊ねると、モデストは懐かしむような目をして言った。
「いいえ、母君に」
まさか、母マリアの方だとは予想もしておらず、メアリは驚きを隠せない。
「母と、面識が?」
「随分昔にですが」
昔とはいつ、そして、一体どんな関係だったのかとマジマジとモデストを見てしまうメアリ。
しかし、話す気はないのか、モデストは「そろそろ失礼します」と一礼して去ろうとする。
が、すぐに足を止めてメアリを振り返った。
「そうそう、アクアルーナの騎士たちは、未だフォンタナに留まっているようですな」
アクアルーナの騎士。
王立騎士団や近衛騎士の者たちが即座にメアリの脳裏に浮かぶ。
「イスベルにいるとは知らずに、必死に探しているのでしょう。それを証拠に、帝都に書簡が届いたらしい。心当たりはないか、と。陛下の居場所も知らぬのでしょうなぁ」
たっぷりと嫌味を含めて話し、「それでは」と今度こそ去っていくモデスト。
(やっぱり苦手だな……)
口の中で呟いたメアリは、緊張で知らぬ間に握っていた拳を緩めた。
マリアとモデスト。
一体二人はどのように知り合っていたのか。
気にするメアリの頬を冷たい風が撫でる。
寒さに身震いしたメアリは本来の目的を思い出し、足元のラベンダーに視線を落としたのだった。