一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


良く考えてみれば、おかしな勘違いをされた場合、十中八九クレイグが原因とみて間違いない。

だが、今回は動揺したせいで頭が回らなかったユリウスは、心を落ち着ける為にも深く息を吸って吐いた。


「何もありませんよ」

「ええ? そうなのかい? いい反応してたから当たりかと思ったんだけど」


まだ疑っているのか、心を見透かすようにユリウスを見つめるルシアン。

ボロが出る前にと、ユリウスは咳払いをし真面目な顔を見せた。

すると、諦めたのかルシアンが「それで、メアリ王女のことで相談ってなに?」と促す。


「……逃がしてやりたいんです」

「それはまた大きな相談事だな」


メアリを攫うように命じたのは皇帝だ。

逃したことがバレれば罰せられるのは想像に容易い。

だが、ユリウスはそこを理解して相談を持ちかけていることを、ルシアンもわかっている。

室内に小さく火が爆ぜる音がし、ルシアンは部屋を暖める暖炉を見つめた。


「それは、もう心に決めたことなのかい?」

「はい。その時、兄上が危険にさらされないとも限らない。だから、兄上はどこか安全に場所に移っていてもらいたい」


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