一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「こんばんは、マグダさん」
メアリの挨拶にマグダは会釈をした。
その手のトレーには、空になったウイスキーの瓶と透明なグラスが乗っている。
「あの、この部屋はどなたの部屋ですか?」
メアリの記憶だと、前に訪ねた時はルシアンの部屋には衛兵は立っていなかった。
もしかして、モデストを警戒して警備をさせているのかとも考えたが、ルシアンは持病がありお酒を飲めないはず。
であれば、ユリウスか、モデストか、もしくは……と、頭に最後の人物を浮かべると同時、マグダは「陛下でございます」と答えた。
「呻き声が聞こえました。体調でも悪いんですか?」
「夜はいつもうなされています。もう、昔から。なので、お酒をお召し上がりになって眠るのです」
「昔から……」
きっと心労からなのだろうと予想してメアリは、持っているポプリをマグダに差し出した。
「これを陛下にお渡しくださいますか」
「これは?」
「寝つきをよくするポプリです」
「ああ、ロッテが話しておりました。お渡し致します」
受け取ったマグダが微笑むと、メアリは「それと、お願いが」と申し訳なさそうに眉を下げる。