一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「なんでしょう?」
「ユリウス皇子とルシアン皇子のお部屋にもこのポプリを届けたいのですが、迷子に、なりまして……」
申し訳なさと羞恥心に尻すぼみゆくメアリの声に、マグダは目元を和らげた。
「まあ、そうでしたか。ロッテは?」
「急ぎの手伝いを頼まれて仕事に」
「それは大変失礼を。では、代わりに私がご案内致します」
「ありがとうございます!」
ワゴンにトレーを置いたマグダは、「こちらでございます」と慣れた足取りで廊下を進む。
先程マグダは『昔から』と言っていた。
口ぶりからして、皇帝の元で働いていた時期があったのだろう。
クレイグはユリウスたちが幼い頃からいた人物。
ならばマグダもまた、若い頃からヴラフォスの王宮で働いていたのかもしれないとメアリは考えながら後ろをついて歩いた。
「こちらがユリウス様のお部屋でございます」
辿り着いた部屋の前に立ち、マグダはノックをするとメアリの来訪を告げる。
扉が開いた先に立つユリウスは、「こんばんは」と挨拶したメアリを見て首を傾げた。
「何か問題でも?」
「問題はなにも。ただ、これを届けたくて」