一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
差し出されたポプリを受け取ると、穏やかで心地よい花の香りがユリウスの鼻をくすぐる。
「これは……ラベンダー?」
「そうです。ポプリにしてみたの」
微笑むメアリの後ろに控えるマグダにユリウスが「ご苦労様」と告げる。
「マグダさん、案内ありがとうございました」
「はい。失礼します」
マグダの退出を見送ると、メアリはユリウスに名を呼ばれて振り返った。
「モデストに会ったら危険だ」
なるべく部屋から出るなと言われているメアリは、外に出る際はユリウスやルシアンに許可をもらうようにしている。
今回はロッテと部屋を訪ねたらすぐに戻るつもりだったのだが、もっと警戒が必要だったかと、ユリウスの言葉で反省するメアリ。
「ごめんなさい。あ、でも、昨日薬草園でお話ししたけど、とりあえずちょっとした口論だけで済んだから大丈夫!」
「口論!?」
口論に発展して何が大丈夫なのかと、ユリウスは眉間に皺を寄せて額に指を添えた。
「メアリ、君は心根の真っ直ぐなところが長所だけど、モデストが相手では短所にもなる。頼むから、俺のいないところでモデストとの接触は控えてほしいんだ。そうでないと、君を守れない」