一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
守ろうとしてくれているユリウスの気持ちを嬉しく思い、メアリは胸に手を当てそっと頷く。
「はい……ありがとう、ユリウス」
「いや、こちらこそ、ポプリをありがとう」
手にしたポプリを持ち上げて見せるユリウスに、メアリは「ルシアン皇子様の分もあるから、渡してもらえますか?」と、もうひとつ手渡した。
「ああ、わかった」
「皇帝陛下も、このポプリが少しでも効けばいいんだけど……」
「……陛下?」
「うなされていたから、マグダさんに渡してもらうようお願いしたの」
まさか皇帝にも配っているとは予想だにしなかったユリウスは驚いて蜂蜜色の目を見張る。
しかしメアリは目の前のユリウスの様子より、初めて入ったユリウスの部屋の方が気になっていた。
「ユリウスも、ここで生活していたの?」
「あ、ああ、五年ほどかな。この部屋は出て行った時からあまり変わってないんだ。だから、ほら、この本も少し子供っぽい」
説明しながら本棚から取り出したのは冒険小説だ。