一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
気づけば夜も更け、メアリはユリウスに部屋まで送ってもらうと扉を開け、礼を述べようとユリウスを見上げた。
その時だ。
「アクアルーナの王女よ」
今歩いてきたばかりの廊下の奥から、マグダと衛兵を連れた皇帝がやってきた。
「これを、そなたから預かったと聞いた」
低い声で告げる皇帝の手には、メアリが渡してくれと頼んだポプリが乗っている。
「はい」と答えつつも、余計なことをしてしまったのかと心配するメアリに、皇帝がまた口を開いた。
「他にもあるか」
「……え?」
催促の言葉に、メアリだけでなくユリウスまで目を瞬かせる。
そんな二人には構わずに、皇帝は手の内に納まるポプリに視線を落とした。
「目覚める直前、余の見ていた夢の様子が変わった。氷柱に貫かれるかのごとく余を苦しめ続けるだけの夢が溶けるように様相を変え、温かな陽が差し込んだ」
起きた時にはいつも感じる息苦しさや胸にのしかかる重さがなかったのだと続けた皇帝は、他にも用意があればほしいのだとメアリに伝える。
よく眠れるものがほしいと。