一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
──朝日が昇り、日が落ちて。
牢の小さな窓から日毎膨らんでいく月を眺めながら過ごすこと数日、ついに満月の夜が数刻後に迫った。
辺りが薄暗い逢魔時になる頃には警備が厳しくなったのか、入り口の衛兵たちがよく会話をしているのがメアリの耳にも届いてくる。
しかし何を話しているのかまではわからず、今夜視るかもしれない予知によってどう行動すべきかを考えつつ膝を抱えていた時だ。
「うっ」
「ぐはっ!」
人の呻き声がいくつか聞こえ、にわかに騒がしくなるもその音はすぐに消えた。
何かあったのかと思った矢先、牢屋の入り口が開いてメアリは警戒し身構える。
けれど、飛び込んできた人物が誰であるかを認めた途端、喜びを胸に鉄格子に縋り付いた。
「ユリウス!」
「メアリ!」
黒い外套の下に鎧を身に纏うユリウスは、壁にかかる鍵を手に取ると急いでメアリを閉じ込める鉄格子の前に立ち鍵を差し込んだ。
「遅くなってすまない。怪我は?」
「どこもありません」