一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


開いた扉からメアリが出ると、ユリウスは安堵の息を漏らす。


「良かった。本当ならもっと早く助けに来たかったんだけれど、ギリギリまで待つようにと兄上に止められてたんだ」

「ルシアン皇子に?」

「理由はここを出てから。今はとにかく君を逃がす」


言うや否や、ユリウスは自分の外套をメアリに着せると手を引いて牢屋を出た。

冷えた地面にはユリウスがのしたであろう兵たちが倒れており、メアリはうっかり踏まないよう気をつけながら砂を蹴って走る。

自分を逃したら迷惑がかかるのではないか、傷つけられる人がいるのではと心配は尽きないが、今はひたすらユリウスに導かれるままに息を切らして前へと進む。

気づけば空は夜のカーテンを下ろし、薄い雲の奥に丸い月を滲ませていた。

宮殿内が慌しくなっていく気配を感じる中、庭の木々に隠れるように身を屈め、皇族のみが知るという秘密の通路を通って外へ出る。


「あの森へ」


ユリウスが指差すのは、少し離れた場所に見える木々が生い茂る森。

呼吸も整わないままに頷いたメアリ、ユリウスの手をしっかりと握り再び走り出した。


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