一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない

2.明かされる種と隠されし矢



『僕は、どうしても許せないやつらがいるから。そいつらだけは苦しめるって決めたんだ』

『それなら、私の大切な人があなたを止めることを毎日祈るわ。あなたの苦しみを終わらせるように』


誰かを苦しめ続ければ、そこに生まれた不幸がまた負の種となり、復讐の花を咲かせてゆく。

許すことはとても難しい。

一度生まれた黒い感情を白に染め上げることもまた難儀だ。

メアリは自分を守るユリウスの向こうに見えるモデストを見据えた。

モデストはもう、止まれないのだろう。

ならば、今、止めねばならない。

遠い昔に願った母マリアの為にも。


「第四、第五部隊は右翼へ展開! 敵を挟み込むぞ!」


オースティンの指令を受け、イザークとクラウスの隊が即座に動いた。

剣を打ち合い勇猛にヴラフォス兵を蹴散らしていく近衛騎士たちにモデストが歯ぎしりをする。


「よろしい! 裏切り者のユリウス皇子を斬れ! メアリ王女は生かして捕らえろ!」


兵たちが混乱しながらも命令に従いメアリを背にするユリウスに次々と斬りかかった。

けれど、月の光を受けて淡く輝く鎧を纏いしユリウスは、洗練された動きでかわし、受け止め、口元に笑みを浮かべる。


< 296 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop