一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
──翌日。
メアリはジョシュアと共に再びアクアルーナ城を訪れていた。
王や近衛騎士たちの出立を見送る為だ。
城門の前には、それぞれの馬に跨る近衛騎士たちが整列し、先頭には銀の甲冑と青いマントを羽織ったアクアルーナ王が白馬の背に乗っている。
そのすぐ後ろにはモノクルをかけたアクアルーナの宰相イアン公爵と近衛騎士団長のオースティン・レスターが控えており、オースティンは顎に髭を生やした雄々しい顔で、愛馬の首を撫でた。
王は見送りに並ぶ家臣の中に、メアリとジョシュアの姿を見つけ、馬に乗ったまま二人に近寄ると微笑する。
「来てくれたのか」
「僕の可愛いメアリが見送りたいって言うからね」
ジョシュアがおどけるように肩をすくめると、メアリはスカートの裾を摘んで片足を下げた。
「おはようございます、王様」
「おはよう、メアリ。お前の顔が見れて良かった。昨日は叱り過ぎたから来てくれないかと思ったが」
「そんな! 王様が心配してくだっさっているのはわかっていますから」
「……お前は本当に優しい子に育ったのだな」
目を優しく細めて呟いた王は、馬上から手を伸ばすと大きな手でメアリの頭を撫でる。
「メアリ」
「はい、王様」
「私が帰ってきたらまた、先ほどのような挨拶で迎えてくれるか」
「もちろんです! お帰りをお待ちしていますね」
メアリの明るい声に、王は満足そうに頷き、手綱を引いて先頭へと戻った。