一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
イアンが馬の腹を蹴り、勢いをつけて果敢に敵兵を斬り倒しにかかるが、対応しきれなかった分がユリウスとメアリに襲いかかった。
ひとり、二人、三人まではユリウスが素早く対応し斬り伏せたが、その後数名が一気に押し寄せてメアリは初めて敵が振り掲げた剣を父の剣で受け止める。
相手の男の力は強く、重く、けれどメアリは歯をくいしばり必死に耐えた。
「大人しく俺に捕らえられて、武功を挙げさせろ!」
「い、や……ですっ」
身の内に宿る恐怖と眼前の相手から目を離さず、渾身の力で押すと、女だと油断していたのか男が僅かにバランスを崩す。
それを見逃さなかったメアリは、一気に剣を払い身体を捻って相手の横っ腹を斬りつけようとしたが、男の反応は早く避けられてしまった。
それだけでなく、男が振った剣先がメアリの二の腕を斬りつけ痛みが駆け抜ける。
「ああっ!」
かろうじて剣は落とさなかったものの、切り裂かれた外套がジワジワと血を吸っていく。
しかし傷口を押さえる暇もなく、自分の身を守る為に剣をしっかりと構えた時だ。