一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「ぐ、はっ……あ……」
対峙していた男の胸から剣先が突き出して、引き抜かれる。
目を大きく開いたまま崩れ落ちた男の背後に立つのは、冷たい怒りを瞳に宿したユリウスだった。
安心感に泣きそうになりながらメアリは剣を下げる。
「メアリ! 怪我を見せて」
愛用の剣についた血を振り払うことなく、ユリウスはメアリの腕を確認した。
「深くはなさそうだけど、早く手当を」
「ユリウス! 後ろ!」
メアリの叫びにも似た声にユリウスは顔を上げる。
怪我に気を取られて、背後に迫る敵兵の存在に気づけなかったのだ。
「死ねぇ! 裏切り者!」
位置からして間に合わない。
切られることを悟り、せめてメアリだけは巻き込むまいとユリウスが剣の柄をきつく握った刹那。
トスン、と敵兵の首に矢が刺さり倒れる。
飛んできた方角を見ると、肘を高く弓を構えたセオがいた。
「隊長! 油断は禁物っすよー!」
「セオ……!」
まだ隊長と呼ぶセオに眉を下げて笑みを浮かべたユリウス。
メアリも嬉しくなり、優しく目を細めるとルーカスの第二部隊がメアリの護衛についた。