一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
メアリの怪我に気づいたウィルは、眉を顰め舌打ちをすると迫る敵に容赦なく剣を振り下ろしていく。
そんな部下の姿を「おーおー、はりきってるな」と苦笑してから、ユリウスを振り返った。
「よぉ、ユリウス! ここは任せて、モデストと喧嘩してこい」
裏切り者はどちらの方かしっかりわからせてやれと言葉で背中を押すが、ユリウスは「しかし」とメアリを守れないことを心配する。
「私なら大丈夫。どうか、皇帝陛下の悪夢を終わらせてあげて」
モデストの復讐が終われば、やがて皇帝の悪夢も消えていくだろう。
けれど、まずは諸悪の根源を皇帝から切り離さなければ始まらない。
「隊長! 指示を!」
セオが、第三部隊の騎士たちが、ユリウスの指示を待つ。
偽っていたユリウスを非難するような声も態度もなく、今も隊長であることを当たり前のように。
ルーカスは馬から降りると、手綱をユリウスに握らせる。
「ケリをつけてこい。そうしたら、メアリ王女を攫って俺たちを驚かせたことは水に流してやるよ」
正体がヴラフォスの第二皇子ユリウスだとしても、ルーカスが知るのは近衛騎士のユリウスしかいない。
そして、そのユリウスは今もメアリを守っている。
それなら、ユリウスは今も変わらず、アクアルーナの騎士なのだと言葉を続けウインクをしたルーカス。