一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


ユリウスはもう戻れないと思っていた。

戻ることは許されないと。

ルーカスの言葉に頷くセオたち。

ユリウスは喜びと切なさを混ぜた微笑みで「ありがとう」と伝えると馬の背に乗った。

そしてメアリを見つめると、行ってくると言うようにひとつ確かに頷いてみせてからモデストを見据える。


「鋒矢(ほうし)の陣をとれ! 正面突破し、一気にカタをつける!」


ユリウスの号令に第三部隊は強力な突破力を発揮する矢印型の陣形を成した。

側面からの攻撃に弱いデメリットもあるのが鋒矢の陣だが、オースティンはそうくることを予測し、ルーカスらをメアリの元に行かせたのだ。

いつでもオースティンらがサポートできる体制に入っており、それを悟ったユリウスは「突撃!」と凛々しく声をあげ、馬を走らせモデストを目指す。

夜空を駆ける流れ星のように斬り込みながらヴラフォス軍を二つに分断した。

戦場にいくつもの武器がぶつかり合う音が響く。

近衛騎士たちは背後にいるメアリを護る為、奮戦を続ける。

その様子を苦々しい顔で見ていたモデストは、自分を守る兵を斬り徐々に近づくユリウスに叫ぶ。


「皇帝陛下に弓引くのですか! 父君を、兄君をお捨てになるのか!」

「いいや、捨てるのはお前だモデスト!」


必ずそうするという意思を込めて、目の前の兵に長剣を突き刺した。


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