一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


皇帝は黙したまま、馬上からモデストを見るのみ。

皇帝の横に並ぶルシアンは、久しぶりに乗った愛馬の背の上で口の端を綺麗に上げる。


「君は信頼されてないね。この戦いでモデストは捕らえられる。その時、どちらについておきたいかと訊ねたら、僕にと答えたよ」


いや、ザエルたちが賢いのかと言い直したルシアンは、モデストが黒騎士隊を駒のように扱っていたのを知っていた。

街道での奇襲作戦で数名が命を落としたにも関わらず、葬いの場にも顔を出さず『減った分は補充しろ』とだけザエルに伝えたのだという。

もちろん黒騎士たちは怒りを覚えた。

それでも従っていたのは、給金がいいからだ。

だが、ルシアンは同じだけ払い、働きに応じて上乗せもすると話した。

さらに。


『君たちには、アクアルーナの近衛騎士たちのようにヴラフォス帝国の剣になってもらう。剣を振るえない僕の代わりに、どうか父上を守ってくれないか』


その言葉で、ザエルたちはルシアンに跪いたのだ。


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