一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「牢に入れられた時に、話してくれたの。ユリウスも知っていたの?」
「兄上が調べ上げてくれていたのを聞いたんだ」
身体が弱くとも、できることはある。
ユリウスがアクアルーナで自らを偽っていたように、ルシアンも何もできない皇子としてモデストの目を欺き、知恵をつけ、人脈を得ることで、自分なりの戦い方で帝国を守ろうとしていたのだ。
だが、皇帝がモデストの憎しみを知っているとは思ってもいなかった。
「余はアクアルーナの王女に約束をしたのだ。役に立つのなら、その身の安全は保証すると」
皇帝の瞳が、メアリを捉える。
「ここ数日、悪夢を見ない時間が増えた。そなたは余の役に立ってくれた」
「お役に立てて嬉しいです」
メアリが答えると、皇帝の視線がユリウスに移った。
「よくぞ王女を守った、ユリウス」
労いの言葉を貰い、ユリウスの目に力が宿る。
皇帝の佇まいに昔のような覇気はないが、それでもユリウスには感じられた。
モデストが現れる前の父に戻りつつあるのを。