一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「開門!」
騎士団長の声が響くと、重い城門が開きアクアルーナの紋章が描かれた旗が立つ。
空よりも深い青色の旗が風にたなびく中、王が前進すると、ゆっくりと列が動き出した。
近衛騎士の中にはルーカスとウィルの姿もあり、二人はメアリに軽く手を挙げてから門をくぐる。
それを見送ると、少し後方を行く騎士たちの中に綺麗な姿勢で手綱を引くユリウスを見つけた。
メアリの視線に気づいたユリウスは、はちみつ色の瞳を和らげ、端整な顔に笑みを浮かべる。
唇が「いってきます」と動いて、メアリは笑顔でそっと頭を垂れた。
(どうか、皆さんが無事に帰ってきますように)
最後の一人が門を出るまでメアリは祈り、見送り続けた。